思考力不足という単純にして重大な課題 – アセットケア代表 宮田丈裕氏(1/4)

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KOLEIZOSCOPEインタビューの記念すべき第一回は、株式会社アセットケア 代表取締役の宮田丈裕さん、および長年にわたり宮田さんと協働しておられる西野亜希さんにお話をうかがいました。お二人が過去10年以上にわたり関わってこられた人材アセスメントや各種人材開発プログラムの経験から見えてくる本質的な課題とは何か。また、その対応についてはどのような方法がありうるのかについて、語っていただきました。


  1. Chapter 1:思考力不足という単純にして重大な課題
  2. Chapter 2思考力が鈍化してきた背景への仮説
  3. Chapter 3思考力に秀でたハイパフォーマーの共通点
  4. Chapter 4Key Questioner (KQ)のアプローチ

Chapter 1:思考力不足という単純にして重大な課題

古森
宮田さんと西野さんは、それぞれに事業を営んでおられながら、人材アセスメントや人材開発プログラムの面では継続的にコラボレーションをしておられるのですね。これまでに、どれくらいの人材をアセスメントされたのですか。
宮田

過去10年間で1,300名以上になります。すべての人材アセスメントについて二人で協働したわけではないですが、かなりの場面で協働してきました。少なくとも、二人の経験値を合わせると1,300名以上のアセスメント実績・・・ということが言えると思います。


古森
1,300名!普通に接するのとはわけが違い、一人一人面談などをして、個人別にレポートを書いて、必要ならフィードバックもして・・・ということを、1,300人分以上ということですね?それはかなりの経験値ですね。
西野

人材アセスメントというと研修形式の観察型アセスメントなども実施させていただいていますが、この人数は面談形式のみです。古森さんも人材アセスメントをされるので、1,300名のアセスメントを積み重ねていくことの具体的なイメージをお持ちいただけると思います。企業数で見ても、大小あわせて100社くらいで実施させていただいていますので、かなりしっかりとした経験を積ませていただいたと感じています。


古森
それだけ経験を積むと、何か見えて来るものがありますか。どんなことでもいいのですが、例えば、課題になっている要素の傾向ですとか。
宮田
あります。実は、そのお話をしようと思って今日はこの対談にやって来ました。
古森

やはり、ありますか。
宮田
もちろん、表面的には色々な課題の「出方」があるのですよ。アセスメントの際に照らすべき軸や尺度も企業ごとに固有のものがありますから。しかし、より普遍的に見た場合に、明らかな傾向があることに私たちは気づきました。ある意味、衝撃的なほどに明らかな傾向が。
西野
そうなのです。数年前から、私と宮田さんとで過去の経験値を俯瞰してみて、何が言えるだろうかという議論を重ねてきました。最後にレポートに書く際に出て来たポイント、クライアントの経営トップにフィードバックしてきた内容・・・など。定性的な作業が多くなりますが、分析的に考えてみたのです。
古森
何が見えてきましたか。
宮田
単純な言葉になってしまいますので、ちょっと拍子抜けするかもしれませんが・・・。それは、「思考力が不足している人材が多い」ということです。つまるところ、数多くの企業でその部分が大きく欠乏しているために、経営者が頭を悩ませているという景色が広がっているのです。
古森
思考力不足。要は、考えずに動く人が多いということですか。
西野
いえ、そういう意味ではなく、「物事を自分でゼロから考える力が足りない」ということです。構想力と言ってもいいかもしれません。
宮田
思考力であり、構想力です。多くの企業で、誰かが描いたものをディリジェントに遂行していく人材は、かなり豊富にいることが分かっています。それ自体は大事なことですが、一方で、最初の絵を作る人が圧倒的に不足しています。
西野
なんとなく「いい人材」と社内で言われている方でも、客観的にアセスメントをさせていただくと、実は遂行系の側面での良さが評判になっている場合が多いのです。人々が遂行すべきこと自体を着想したり、形にしたりする側面での「いい人材」には、なかなか出会うことが出来ません。
宮田
ある経営者の言葉を引用させていただきますと、「今いる人材の付加価値が低すぎる」という状態に陥っている企業が多いのです。ちなみにこれは、私たちがアセスメントさせていただくことが多いホワイトカラーの世界を中心にした話ですが。
古森
なるほど・・・。10年前と比較して、どうなのですか。
宮田
10年前の段階でも、この部分の弱さは他の要素に比して際立っている傾向はありました。もともと、強くはなかった分野です。残念ながら、その傾向がさらに顕著になっているというのが、私たちの経験値の範囲からは明らかになってきています。日本発のイノベーションが足りないという声もありますが、その原因の一つを人材の側面から私たちは見ていたのだなと気づきました。
古森
日系企業と外資系企業の日本法人とで、何か違いはありますか。
西野
会社による個別性はもちろんありますが、それは日系・外資系という違いではないように思います。日系でも外資系でも、課題として根本にある部分を見ていくと、結局は思考力、構想力の問題に行きつくことが非常に多いです。

>> Chapter 2:思考力が鈍化してきた背景への仮説