今後の展望 – SOPHYS Corporation CEO & President Fariza Abidova(ファリザ・アビドヴァ)さん(5/5)

SOPHYS Corporation CEO & President Fariza Abidova

  1. ウズベキスタンから神戸へ
  2. 「職場での異文化理解」の研究
  3. 独自のプログラム開発
  4. 日本企業のグローバル化課題
  5. 今後の展望

5.今後の展望

古森
今後、どうしていけば良いでしょうか。
ファリザ
日本企業は、自社の若い人材が世界を知ることができるように、海外のビジネスパーソンと交流するプログラムをもっと積極的に実施すべきだと思います。若手人材は、そのプログラムを通して、ステレオタイプのイメージにごまかされたりせずに、未知の国や地域と本当のつながりを経験することが出来るようになるでしょう。また、それがきっかけとなり、より異文化について興味をもって学びたいと思うようになるでしょう。
古森
そうした交流プログラムの先にあるものは、どんな取り組みになると思いますか。
ファリザ
日本や欧米のビジネス習慣だけに基づくアプローチではなく、ビジネスの相手となる国の文化、取引相手のビジネス上の価値観などを理解し、尊重することをベースにしてコミュニケーション、セールス、プレゼンテーション、ネゴシエーション、マネジメントなどのスキル要素を組み合わせたプログラムを実施すべきです。各国が独自の文化的背景を持っていますので、そこに生まれ育った人々が獲得する優先順位感覚やモチベーションの源泉、ビジネス上の価値観などもさまざまです。その国のビジネス慣習を尊重し、理解しながら接することは、長期的視点でグローバル経営を成功させるために重要なカギとなります。
古森
なるほど。他には、なにかグローバル経営課題の核心にあると思われる課題がありますか。
ファリザ
日本国内、海外を問わず、外国人の人材を確保して効果的に活用することが苦手な日本企業が多いと感じています。多くの日本企業が外国人のビジネスパーソンを採用していますが、ほとんどの場合、彼ら、彼女らを自社内につなぎとめて、効果的にスキルを発揮させるには至っていないように思います。
古森
ひと昔前に比べると、外国人の従業員数数自体は、国内でも海外拠点でも増えてきている日本企業が多いですね。世界全体の連結で見ると、過半数が外国人という日本企業も少なくありません。しかし、その活用はといえば、まだ道半ばの企業が多いでしょうね。
ファリザ
外国人スタッフが、わずか数年で日本企業を退職する理由はたくさんあります。例えば、持っているキャリアプランの時間軸と日本企業の常識があわない場合がよくあります。一般的には、日本の人材よりも外国人の人材のほうが、短い時間軸でキャリアを考えていますね。また、現時点よりも良い条件での仕事のオファーが他社から来たり、参加したいと思っていたプロジェクトへのオファーが舞い込んでくるなど、いろいろな要素があります。単に、社内の人間関係上の問題が影響している場合もありますね。
古森
理由は様々ですが、要するに外国人の人材が力を十分に発揮する状況には至っていない場合が多いという見立てですね。
ファリザ
特に、最後に挙げた「人間関係」という離職理由は、ミスコミュニケーションや異文化に対する誤解が原因で生じることがよくあります。「プロ意識」についてのイメージに対するギャップ、仕事に対する価値観の違い、日本企業と外国人スタッフ相互の期待に対するギャップ、文化的なバック・グラウンドにもとづく思い込みなどが、その例です。ほとんどの場合、適合しない双方の文化や価値観にもとづいて、お互いが最善を尽くそうと努力することで、結局、異文化についての誤解が生じてしまいます。また、多くの場合、日本人のマネージャーや同僚が、外国人スタッフに「空気を読むこと」を期待して、あるプロジェクトの経緯や背景を説明せず、曖昧な表現で依頼をすることが、ミスコミュニケーションを引き起こすおもな原因となります。
古森
実際、異文化を超えたコミュニケーションの際には、どのようなことを留意すれば良いのでしょうか。
ファリザ
グローバル企業における理想的なコミュニケーションのポイントは、おおむね以下のようなものです。例えば、あるタスクを誰かに与える場面を想像してみましょう。

  • プロジェクト全体について説明する(全体像をイメージさせる)
  • このタスクにアサインされた理由について説明する
  • 役割を定義づける
  • 期待される結果についての明確に伝える(例を見せながら伝える)
  • マイルストーンを設定する
  • タスク完了後にフィードバックを与える
  • スタッフのモチベーションを上げることができる正当な評価を示す
古森
私は常日頃から、明示的に、客観的に、透明性を持って仕事を進めることが、世界全体を視野に入れて場合の最重要事項の一つだと思っています。それとも符合する部分の多いお話ですね。
ファリザ
私が行った外国人スタッフへのインタビューを通じて明らかになったのは、彼ら、彼女らが日本企業で働くモチベーションを失った理由のほとんどが、「自分がいつもブラックボックスの中にいる」ように感じていたことでした。
古森
典型的な状況ですね・・・。
ファリザ
『自分がアサインされたタスクを正確に処理しているかどうか、また、その結果が期待通り満足のいくものだったかどうか、上司であるマネージャーがどのような成果を要求しているのか知りませんでした。知らないことについてたくさん質問をすると会社で「スキルがない」などイメージが悪くなって、評価が下がるのではないかと心配していました。そもそもたくさん質問できる雰囲気ではなかったので、自分が常に良い仕事をしているかどうか分からなくて不安を抱えながら仕事をしていました』と答えた外国人ビジネスパーソンが多かったのです。
古森
仕事の場面で、何を安心材料や不安材料と感じ、何を快・不快と感じるかは、やはり文化による違いも大きいのでしょうね。さらにその先に、個人による違いも多々あることでしょう。今後、ファリザさんはこの問題にどう対応していくおつもりですか。
ファリザ
グローバル化を進めて行く日本企業において、国や分化を超えた相互理解を促進していくことは、最重要課題の一つだと思います。そのためには、まず「職場内異文化コミュニケーション」についての研修プログラムを、日本人スタッフ(役員から新人までの全階層)と外国人スタッフの双方に対して実施すべきだと思います。
古森
両方、というところがポイントなのでしょうね・・・。
ファリザ
そうなのです。そして、手始めにマネジメント、チームワーク、人間関係、セールス、交渉などの実際のビジネスシーンにフォーカスした形で、外国人ビジネスパーソンの「本音」について書かれたブログを発信してみようとも思っています。それを通して、グローバル化に向き合っていく日本企業の皆さまが、外国人の同僚、部下、取引相手についてより深く理解し、協働を成功裏に進めていくための一助となればと願います。
古森
なるほど、そのブログも楽しみですね。そして、そろそろお時間になりました。ファリザさん、今日は興味深いお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。グローバル経営は、異文化理解だけで前に進むものではないでしょうが、異文化理解がその成功に寄与することは間違いないと思います。グローバル組織の多様性(ダイバーシティ)を生かしていくためにも、国や文化を超えて相互の違いを認識し、リスペクトし、前向きに生かして行く姿勢が大事ですね。今後のご活躍を期待しております。

Fariza Abidova

[KOLEIZOSCOPEインタビュー] 第3回 SOPHYS Corporation CEO & President Fariza Abidova(ファリザ・アビドバ)さん


  1. ウズベキスタンから神戸へ
  2. 「職場での異文化理解」の研究
  3. 独自のプログラム開発
  4. 日本企業のグローバル化課題
  5. 今後の展望