2016.07.12
日本全体の地域活性化への視点 – 本坊酒造代表 本坊和人氏(2/4)
- ウィスキーづくりを創業の地で
- 日本全体の地域活性化への視点
- 世界からリスペクトされる酒類企業へ
- 酒造りと人づくり
Chapter 2:日本全体の地域活性化への視点
- 古森
- 先ほどお話に出ました、本坊社長が幼少期に過ごされたあの家のことですが・・・。何やら工事が進んでいるようですね。改修中ですか?
- 本坊
- ああ、よくお気づきになられましたね。あの家を大改修して、津貫ディスティラリー(distillery = 蒸溜所)併設のビジター施設のようなものにするのですよ。資料館的なものに加え、試飲もできるバー・スペース、多目的スペース、庭園内の散策路なども検討中です。まだ工事の途上ですが、11月に完成の予定です。
- 古森
- それは素晴らしいですね。蒸溜所を訪れる楽しみが増えますね。しかし、古民家の改修には多大なコストがかかることも事実です。かなり手のかかる工事とお見受け致しますが、どういった構想をお持ちなのでしょうか。
- 本坊
- この地を、再び「人の集まる場所」に変えていきたいのです。
- 古森
- 人の集まる場所・・・。
- 本坊
- 私の祖父母の時代には、あの家は毎日のように人が集まってくるにぎやかな場所でした。しかし、今はどうですか。ここ津貫の地のみならず、南さつま全域で見ても、鹿児島県として考えても、寂しい地域が増えています。明治維新などの過去の出来事を誇りに思う向きもありますが、やはり「今」を活性化させなければと思います。
- 古森
- 「今」を活性化。刺さります。
- 本坊
- 今回この地にウィスキーの蒸溜所を作り、併設する施設で来訪者が楽しめるようになれば、人が集まるきっかけが生まれるのではないかと思います。この付近の方々だけでなく、日本全国、あるいは海外からのバックパッカーなどにも是非来ていただきたいですね。そのためには、やはり象徴的な施設というものは重要です。
- 古森
- なるほど。単に蒸溜所を作るだけではなく、地域活性化の視点で「人が集まる場所」を作ろうとしておられるのですね。
- 本坊
- ワインの世界では、海外でも国内でもワイナリーやシャトーをめぐる旅が人気です。また、日本のウィスキー界でも、それぞれの蒸溜所への見学ツアーなどは近年のウィスキー・ブームの中で盛んになってきています。しかし、複数のウィスキー蒸溜所を結んで訪問していくようなツアーはまだそれほど見かけません。今回新たに生まれる蒸溜所は、ジャパニーズウィスキーの蒸溜所として最南端にあたります。北から南まで、ウィスキー蒸溜所めぐりの旅が可能になるわけです。
- 古森
- 北は北海道の余市に始まり、宮城、秩父、長野、御殿場。少し下って知多、山崎・・・。そこに九州・南さつまの津貫が加わることで、まさに日本列島縦断のウィスキー・ツアーが可能になりますね。しかし、そこまでダイナミックな視点で、ウィスキーを起点とした地域間回遊型の観光活性化を考えておられたのですね。
- 本坊
- 大それたことのように聞こえるかもしれませんが、今はSNSの時代です。海外の人も含めて、「えっ、そんなところがあるの?」と思ってもらえる情報発信ができれば、世界中から人が来る時代です。多くの人が、興味深い訪問先を求めています。津貫で私たちが仕掛けていくことを、日本中に、そして世界に伝えていきます。