2016.07.12
世界からリスペクトされる酒類企業へ – 本坊酒造代表 本坊和人氏(3/4)
- ウィスキーづくりを創業の地で
- 日本全体の地域活性化への視点
- 世界からリスペクトされる酒類企業へ
- 酒造りと人づくり
Chapter 3:世界からリスペクトされる酒類企業へ
- 古森
- 「世界」の話が出ましたが、グローバル化していく事業環境の中で、本坊酒造さんの立ち位置はどうなっていくのでしょうか。
- 本坊
- 世界全体、人類全体、酒類業界全体を視野に入れて仕事をすべきだと思っています。私自身、もともと南九州コカ・コーラ在籍時にブラジルに赴任していた経験などもありますし、昔からフランスの有名シャトーやドメーヌを訪問し、弊社で輸入ワインを買い付ける等の仕事をしていました。その他、世界を知るために国内外の様々な場所を訪問しています。
- 古森
- まず、広い世界を知ることが大事だと・・・。
- 本坊
- 伝統的に焼酎造りを生業としてきた本坊酒造の枠の中にいると、そうした広い視点を持ちにくくなります。しかし、お客様は私共の製品をお選びになる前に、様々な飲料の選択肢から酒類を選び、その中からワインや焼酎、ウィスキーなどお酒のカテゴリを選び、その中で本坊酒造の製品を手に取っていただくわけです。造り手としての私たちも、視野を広く持たなければなりません。
- 古森
- たしかに、そういう目線を持たないとお客様側の気持ちも想像できないですね。
- 本坊
- 社内に向けては、私は常々「ワインベースで焼酎を考えよう」と呼びかけています。
- 古森
- ワインベースで焼酎を?
- 本坊
- ワインという世界は、必ずしも大手の生産者が大資本を投じて大規模生産を行い、マスマーケティングで多額の広告宣伝費を投入して成り立っているわけではありません。もちろん、そうした資本規模を生かした事業活動も色々とあるのですが、鍵となっているのはそこではないのです。規模としては本坊酒造とそれほど変わらないような事業体が、質の高い製品を世に問うて、それが世界中で認められて今に至るわけです。そこには、商業だけでなく文化の要素があります。世界市場を考えた際に、私たちの仕事もそういう視点を持って取り組んでいくべきだと思っています。
- 古森
- なるほど、それが「ワインベースで考える」ということなのですね。本質的には、焼酎だけでなくウィスキーにも当てはまる視点かもしれませんね。ウィスキーにも、工業製品的な位置づけのものがある一方で、極めて上質な、まさに文化といえるものまでありますね。世界に独自の文化を発信していけるような、そういう仕事になっていくと素晴らしいですね。
- 本坊
- ところで古森さん、ワインの造り手さんと握手したことってありますか?
- 古森
- いえ、残念ながらありません。
- 本坊
- フランスのワイナリーでいつも感じるのですが、彼らの手は握手するとゴツゴツしていて、まさに「農家の手」なんです。汗水たらして働いている人の手。それでいて、会話はとても知的でハイレベルです。あの手に、色々なメッセージが込められているなぁ・・・と思うのです。そういう生産者が手掛けているからこそ、そこに物質ではなくストーリーが、文化が生まれるのです。
- 古森
- そのあたりは、「手造り」の伝統を守っている南さつまの焼酎界にも通じるところがありますね。
- 本坊
- 実態がないものを無理やりストーリーにしても無意味ですが、こだわっている実態があるならば、それをもっと世界に伝えていくべきだと思いますね。私共を含め、手造りの焼酎文化を守っている事業者は、もっと手を組んで「Japanese traditional spirits “Satsuma”」として世界に向き合っていくべきです。また、そういう精神で今後のウィスキー事業の新展開を含め、本坊酒造の歩む道を拓いていきたいと思います。